こちら。
増永氏へのインタビュー記事第2回目です。前回の記事は<Profile>
1974年生まれ 奈良県出身。早稲田大学大学院商学研究科修了。「宇宙一の企業を創る」― 2000年8月、株式会社ライブレボリューション の代表取締役社長に就任。経営者向けメールマガジン『プレジデントビジョン 』の発行者。著書に『宇宙一愛される経営 』(総合法令出版)、『仕事頭がよくなるアウトプット勉強法 』(サンマーク出版)、『Twitter就活 』(ダイヤモンド社)ほか2冊がある。(http://www.live-revolution.co.jp/masunaga/ より)twitterは@masunaga_lr
起業するも、そうは問屋がおろさない
様々な経営者から刺激を受けて「起業」の道へ辿り着いた増永氏だが、起業後の道は決して甘くはなかった。
「最初の4カ月、まったく売上がありませんでした。そして、売上の見込みも立たずに、資本金2000万円のうち1000万円がなくなった。『会社なんて作らなければよかった』と思ったくらいです。創業後4ヶ月目なんて、丸々一カ月もの間、不安のために、まともに眠れませんでしたね」
ネットバブルが弾けた直後で、売上も立つはずがない。渋谷に事務所を置けばさまざまなベンチャーキャピタルから出資をうけられ、資金調達も上手くいくだろうともくろんでいたが、その事務所も移転せざるを得なかったという。
「にっちもさっちもいかなくなり、八王子の山奥に引っ越してファストフード店でアルバイトでもしながらプログラミングを勉強しようと、創業メンバーとの間で覚悟を決めていたのです」
「そして覚悟を決めたと同時に、起業時に大変お世話になった経営者の方へまずはお詫びをしなければならないと思い、報告に行きました。会社の現状を説明し、今後どうしていくかを報告したところ、思いもかけない言葉が返ってきたのです。『君たちは優秀だから、全員うちにこないか』と。驚きとともに嬉しくもありましたが・・・それはつまり、せっかく立ち上げた会社を潰すということでもあります。これでは元も子もありません。そこで、私以外のメンバーをコンサルタントとして雇っていただくことにしたのです」
以後、その会社でコンサルタントとして創業メンバーは3年間働いたという。
「仕事を提供していただいた上にさらに、中延というところにある民家を月五万円で貸してもらえました。そこはオフィス兼私の部屋となったのですが、風呂がない。だから毎日銭湯に通うしかない。おかげで私の20代の青春はなくなったという(笑)」
そんな生活も三年経ち、「いつまでもこのままでは会社の成長はない」と思った増永氏は、腹をくくって一世一代の大胆な行動に出る。
「資金調達もままならない中、中延から浜松町駅前ビルの17階にオフィスを移転させてしまいました。この移転によって、あと4カ月で資金がなくなるという状態に陥ったんです。そして、資金が底をつくぎりぎりの時に、一億円の増資を行なうことができました。自分を追い込んで、資金を集めた―今考えると、方法論としては間違っているんですけどね」
浜松町への移転から半年後に始めたモバイル広告代理店事業は見事功を奏し、成長を続け、今や同社のメイン事業となっている。当時、増永氏は一世一代の勝負に出て、結果を残しているのだ。
「確かに、挫折の経験はつらいことです。でも、その経験があったからこそ、今がある」辛酸を舐めつくしたからこそ、増永氏の言葉には重みがある。そして、その辛い経験を乗り越えられた背景には、『仲間』の存在が不可欠なのだとか。
「もちろん、前提として『社会のため』というのは大事なことです。ただ、私自身つまずきましたけど、また立ちあがれたのには、それまで一緒に苦労を共にしてきた仲間がいたからです。一緒に働く人たちはすごく大事。自分が何のために働いているか・・・それはやっぱり、一緒に働いている人たちへの責任を果たすことだと思うのです。私は社長ですしね」
仕事をするときに「自分が誰のために働いているのか」を考えると、増永氏には自ずと一緒に働くメンバー(社員)の顔が浮かぶという。社長とメンバーがお互いに思い合うことによって、安心感が生まれ信頼につながっていく。そして、その思いが行動に移っていくのだ。
「寝食を忘れて、『この人のためなら働ける』と思える人たちがいる。みんながその思いを共有してベクトルが一致すれば、自ずと会社は成長していくものなのです」
それに気がついてから、会社の成長は安定的になっていった。採用では、増永氏は今も「この人のために社長として働けるか」と考えながら、面接試験を行うという。
私たちも「今やっている仕事は、誰のため? 何のため?」と見直してみると、見えてくるものがあるはずだ。
「プレジデントビジョン」を始めて
前述したとおり、増永氏は「プレジデントビジョン」という経営者による経営者のためのメールマガジンを配信すること8年。読者数は12万人、メルマガをまとめた本も二冊刊行している。
「普段会えないような経営者の方たちに会えるのは、素晴らしいじゃないですか。しかも、インタビューを通じて諸先輩方の経験や手法を学べる―これはとてつもない財産になると思うんです。また、インタビューの時間をいただいている以上、取材される側にもメリットがなければなりません。多くの読者に伝えることは、そのメリットの一つです。もちろん読者の方々にも、プレジデントビジョンを通じて何か学びを得られるような、そんなインタビューを心がけているのです」
氏は数多くの社長を取材してきたが、インタビュー中には「その人らしさ」が出てくるのだとか。その中に見えてきた「いい経営者とそうでない経営者」――その違いとは。
「いい経営者は人間味があり、自分の体験を元にいろいろな話をしてくれます。そして、当然ながら因果関係・・・例えばなぜ会社が上手くいっているのか、なぜそれをやっているのかなどをはっきりと把握されているので、お話がとても明確で勉強になるのです。一方、その逆をいくと思われる経営者は、要は自分の経験でなく本や受け売りの一般的な話が多いです。その人の個性を全面的に出したいのに、そういう話ばかりだと独自性もなく、面白みが減ってしまいます。つまり、そういう話をされている方というのは、インタビュアーや読者のニーズにまで気が回っていない方です。そして、そういう方が経営している会社は、上手く行かない事が多いと思います」
経営者としてどうあるべきかを実地で学べている人と、自分の感性で自分のやりたいようにしかやっていない人とでは、後々の結末が変わってくるようだ。
「良い面も悪い面も含め、そうしたお話を参考にして経営者の道を追求できれば・・・やがては当社や当社のメンバーが起点となって、もしかしたら社会に貢献できるかもしれない。だからこれからも、一人でも多くの経営者の方にお会いしていきたいと思っています」
「宇宙一愛される会社」を目指して
日本一でもなく世界一でもなく、宇宙一。増永氏はあくまでも、「宇宙一」にこだわる。
もちろん、宇宙一を掲げるには理由がある。
「人類は将来宇宙に進出し、地球以外の星などが生活基盤になるでしょう。そうすると、「惑星間経済競争」といったものが起こりえます。だから将来的には、宇宙規模でナンバーワンを目指す必要があると思うのです」
内装をリニューアルしたライブレボリューションのエントランスは、まさに「宇宙船」をイメージしている。
【起業を目指す学生へメッセージ】
「『すべては、夢を持つことから始まる』という言葉が私は大好きで、会社のコーポレートコピーにもしています。これは、ソフトバンクの孫社長にいただいた言葉です」
氏が、この言葉をいただいたキッカケとは?
「孫さんにメールで『未来を背負っていく若者にこれは伝えたいという言葉を、私に教えてください』とお願いしたところ、『すべては、夢も持つことから始まる』と書かれた返信メールをいただいたのです。以来、私はこの言葉を座右の銘としています」
夢を描けない者は、現実も描いていくことは出来ない。『すべては、夢を持つことから始まる』―この言葉は、氏だけでなくライブレボリューションの軸にもなっている。
(文:山中@yamachika0719)
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