Relifeの起業家インタビュー記事でも一ツ木さんが取り上げられましたが、内容が被らないように取材したので、下記記事と合わせて読んでみてください。
Relife記事「CEO/Co-Founder of Grow!Inc. 一ツ木崇之」
2003年4月株式会社ベンチャー・リンク
2005年8月デジパ株式会社
2006年5月株式会社ROI
2010年7月株式会社スタラボ創業
2011年3月Grow!Inc創業
HP:http://growbutton.com/
クリエイターの問題を解決するGrow!
「もともと、ぼくはDJをやっていたんですよね。だから、僕には音楽関係者と接点がある。音楽業界の現状を見ていると、クリエイターに対してお金が行き届かなくなってしまっています。というのも、事務所を通してしまうから。この仕組みがクリエイティブの世界で阻害要因になっています。このままでは、クリエイターを志す若い人たちが夢も希望も失ってしまう」
例えば、AKBのCDは1枚1000円ほどするが、1枚売れたとしても1人の収入は1円にも満たないそうだ。それは、収益の大部分が事務所などの中間業者がもっていってしまう。このままだと、次第にクリエイティブなことにお金を使わないような傾向になってしまうとの懸念があった。
「だけど、ソーシャルメディアの登場で時代は変わった。ミュージシャンの例は極端ですが、クリエイターはファンに対して直接コンテンツを届ける事も、コミュニケーションも取る事が出来るようになった。しかしながら、ファンからクリエイターに対してチップのようにお金を渡せる仕組みがなかった。僕らのサービスではそういったチップを払うようなプラットフォームを作り、ミュージシャンだけでなく、ブロガーやフォトグラファーなどの様々なクリエイターを支援しようとしています」
Grow!を簡単に説明すると、webページ上に設置した「Grow!ボタン」を押すことにより、設置したクリエイターやブロガーに直接お金を渡すことができるようにするサービスだ。サービス詳細はこのブログでは省くが、知りたい方はGrow!のHPを。
彼らがこのサービスをプラットフォーム化させるには、ファンがボタンを押したくなる仕組みとファンが拡散しやすい仕組みが必要だ。
「いまは、独立してクリエイター活動をしている方を対象としています。例えば、アンダーグラウンドで活躍するアーティストや、フリーライターとかね。将来的には、事務所に所属しているアーティストなども直接お金を受け取れるような手段として使ってもらおうと思っています。ただし、新しいサービスですので、まずは認知度のアップや事務所側への丁寧な説明が大事であると考えています」
海外に拠点を移した理由
「去年の秋頃からこのサービスを考え始めていました。そのときから既に海外進出は考えていましたね。今年の夏頃からはサンフランシスコかベイエリアに拠点を置いて活動していきます。」
ソーシャルメディアが発達し、日本でサービスを作っても海外に発信できるような時代になった。しかし、それでも彼は海外に進出すると決断した。彼が海外に拠点を移したのはなぜだろう。
「拠点を海外に写した1番の理由は『法律』です。例えば、『Grow!』の場合だと、ポイントを買い、Grow!という行動する。一見、ユーザーがお金を出したり入れたりするのは銀行と変わんないじゃないですか。だから、日本の法律ではアウトなんです。しかし、米国やヨーロッパ諸国では個人間でのお金の移動が可能です」
日本での活動上ネックになっているのは、2010年4月から施行された「資金決済法」という法律。ちなみに、PayPalでも日本国内では個人間で送金が出来ない理由もこの法律のためだ。
「2番目の理由は『投資支援』です。向こうの投資家から出お金を出してもらうことで得られるメリットは、投資額の大きさと投資家の厚い支援です。そして、3番目の理由は『チップ文化』です。日本よりもアメリカの方がチップに関する文化が根付いていると考えました」
極めて合理的な海外進出をしようとしているGrow!。海外進出する以前から徹底的に調べているらしい。
「今は一人でアメリカに行ったり来たりしてるんだけど、知り合いはたくさん出来たけど、やっぱり一人は寂しいよね(笑)ファイナンス面や経営面、技術面の壁はみんなで楽しみながら乗り越えられる壁だと思うが、こればかりは(笑)。まぁ、メンバー全員と夏から渡米するために準備をするのが今の重要な仕事ですからね」
ネットワーキング
「繋がりたい人とは信頼できる人からの紹介で繋がる事が多いです。海外の投資家や起業家と繋がりたいときは、VCさんからの紹介や起業家同士の紹介だったり。必要なときに必要な人と繋がれるようなネットワーク作りを心がけてきました。資金調達に関しても同じで必要な投資家の方々を紹介してもらい、交渉をしてきました」
シードラウンドで48万5000ドル(約3800万円)もの資金調達に成功したGrow!。シード段階にしては大きな調達額であり、彼らへの期待の大きさが伺える。
「資金調達に関しては、前職で財務をやっていたわけではなかったので最初はさっぱりでした(笑)自分で『起業のファイナンス』を読んだり、Y Combinatorなど向こうのVCから出資を受けている起業家などに教えてもらったりして勉強してましたね。そこも紹介で繋がりました。日本ではなく米国での資金調達について勉強し、今回のラウンドではConvertible notesを使いました」
Convertible notesとは日本でいう転換社債のこと。日本の転換社債とは少し性格が異なり、アメリカの方が法律的視点から見て使い勝手が良いのだ。投資家は日本に属する方々だが、米国に登記することでこの手法を使うことが可能になった。
「他にもネットワーキングは、起業家の集まる交流会やにパーティに行ったりもしています。Plancastなどをチェックすれば、米国で知り合いがいなくても、スタートアップ系のイベントに参加をし、起業家同士のネットワーキングを作ることができる。しかも、世界各国から集まる優秀な起業家たちと」
日本も海外も変わらない
「シリコンバレーでいろんな起業家のピッチを見ていても、日本も海外もレベルは変わらないと思います。日本から海外に出ていく起業家に限らず、日本の多くの起業家が問題有りきでサービスを作っていると思うんだよね」
TechCrunch西田氏(記事「起業家に告ぐ、TechCrunchにだまされるな」参照)の言うように模倣サービスが多いという見方もあるが、氏はそうではなく問題解決の視点から言うと、日本のスタートアップは海外水準にあるという。
「起業家は誰か困っている人を助けたいんだよね。例えば、Grow!の場合はクリエイターが自分の好きなことを仕事にできるように、プラットフォームを作ろうとしている。そもそも、競合データなんて本当はどうでもよくて、自分が解決したい問題があるからサービスを作ってる。だから、似ているサービスもあるけど、単に真似したんじゃなくて『問題解決のためにサービスを作っていたら結果的に似てしまった』方が多い気がします」
よく言われることだが、自分の考えているサービスは世界中で少なくとも3人は作っている。まさにこのことだ。
「このブログに載っている仁士くんも、草野さんも同じだよね。うちのカズワタベも音楽活動をやっていて、クリエイティブなことにお金は使われなくなっていくだろうなーと感じていた。つまり、この世に存在するほとんどのプロダクトは、誰かが世の中のおかしい所に気付き、変えようとした結果だと思うんだ」
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