今回はサムライインキュベートの榊原健太郎氏にインタビューしてきました! ライターは両角に代わり、坂本(@thetacpa)が担当です!
1974年 愛知県名古屋市 出身。関西大学社会学部 卒業。97年 日本光電工業株式会社 入社。2000年 株式会社アクシブドットコム(現ECナビ) 入社 01年 株式会社インピリック電通(現電通ワンダーマン) 入社。02年 株式会社アクシブドットコム(現ECナビ)復帰。07年 グロービス経営大学院 経営研究科 入学。08年 Samurai Incubate Inc.設立 榊原氏は、主にスタートアップと呼ばれる事業を立ち上げて数年以内のベンチャー起業を包括的に支援するインキュベーター。 会社HP(http://www.samurai-incubate.asia/overview.html)には、 会社名『Samurai Incubate Inc.』の由来は、日本人の持つ清らかなサムライ魂であると説明されており、
インキュベーターが未来を創る
起業のアイディアはある、しかし資金がない、もちろんノウハウもない。そんな起業家にとって心強いのがインキュベーターだ。 VCとは主に「高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行う投資会社」。資金提供者の総称としても使われ、エンジェルもインキュベーターもVCの一つと言える。
「私は儲かるか否かより、世の中を一気に変えるか否かで投資判断をします。それか、ニッチだけど確実にニーズのあるサービス」
というのはサムライインキュベートの榊原氏。簡単に言えばSFで想像されたものを実現させる事業に投資したいそうだ。例えば、ドラえもん、マイノリティーリポート、攻殻機動隊の世界を実現する事業。またはマッチングのようなニッチだが確実に需要のある事業が投資の対象になりやすいのだとか。
「戦略ミーティングを毎週やるところは他にない。今までの投資を含めたご支援先の数は23社で、年間50社ほど投資します。月に40人ぐらいの起業したい方に会います。ご支援先には、戦略ミーティングを毎週行いますよ。他社では毎週行っているところはないのでは」
榊原氏は徹底的に起業家目線。出資する際には、契約書を結ばず、定期的なミーティングとメールで済ますスタイルも特徴的だ。
「数百万円出資しますが『以下の~を守って』みたいな契約書を見ると起業家はテンション下がりますから。彼には気持ちよくスタートさせてあげたい。今は練馬の一軒家をサムライハウスと名付け、起業家と今日で共同生活をしながら支援するスタイルもとっています」
共同生活し互いに刺激し合うのだ。その姿は漫画家を志す若者が集まって寝食を共にした「トキワ荘」にちなみ「起業のトキワ荘」と呼ばれる。
日本のベンチャーはシリコンバレー水準
日本のベンチャーはシリコンバレーに劣るとも言われるが……。ネットワークを作るため定期的にシリコンバレーへ赴く榊原氏は、どう考えているのだろうか。
「IT系のサービス全般において、日本のスタートアップはシリコンバレーにひけをとらない水準ですよ。Y combinatorの投資先を見ても、別段もの凄いアイディアがあった! という記憶はないですね」
Y combinatorは、2005年の創業以来、300以上のスタートアップに投資し、Dropbox、 Bump 、ソーシャルブックマークのReddit、ドキュメントファイル共有サイトのScribd、オンラインストレージサービスZumoDrive、ブログのコメント欄を拡張するDisqus、クラウドサーバ管理のCloudKick、世界中の貸し部屋を検索出来るAirBnBなどを世に送り出してきた世界一とも称されるインキュベーター。http://ycombinator.com/
「引けを取らないといっても、日本のベンチャーは、世界とのコネクションも無いので世界に知られていないのが現状。海外でもコネクションがなければ投資を受けられないものです」
とはいえ、そこに切りこまなければ活路はない。そんな中、サムライインキュベート関係者だけがシリコンバレーでのイベントに出展してるそうだ。
「アメリカだと日本の十倍ぐらいの額で資金調達できる。だから、世界的な企業が生まれる。例えばGoogleの場合、三年で約25億円調達していますが、日本ではまずありえません。Twitter、Facebook、Amazonは五、六年赤字だったので、海外の先見性のある投資家じゃないと投資判断は難しい」
つまり、日本のベンチャーに足りないのは、アイディアではなく先見性のある投資家とのコネクションなのだ。
「つまり、日本のベンチャーがアメリカ規模の出資を受けられれば、きっと次のTwitter、Facebook、Amazonは日本から生まれます」
まずはインターンせよ!
榊原氏は、学生起業家に出資しているインキュベーターとして、学生での起業をどう思っているのか?
「学生で起業にチャレンジすることは良いと思います。ただ、社会人と同じような経験をしておいたほうがいいんで、起業前に一年間フルコミットでインターンすることは必須と言えますね。僕が大学生なら、一年間インターンへ行って、起業か、就職ならベンチャーか、大企業か決めます」
現に、起業したい学生はみな長期でインターンしている。成功したベンチャー社長もインターンを経験している人が多い。
「学生はとにかく知識が足りない。でも、社会人と同じレベルで一年間インターンすれば、マナーや会社の仕組みを学べる。そうすると、起業でも成功するスピードが速いんです」
起業においてもマナーなどの基礎は大前提。そして、インターン先は決してベンチャーに限定されない。
「インターン先は会社全体が見えるので規模の小さい企業がいいかもしれないですね。そうでなくても、大企業の営業だけでもいい。営業をやると社内の様々なツール、Word、Excel、注文書等々、会社の仕組みが分かる。業種を問わず、まずはインターンしてみることですね」
明確なビジョンとミッションが大切
長期インターンでは社会人として、または就活にも役立つスキルを磨く事ができる。特に起業を志す際、学生が身に付けておくべきスキルについて聞くと……
「ファイナンス、英語、プログラミングの3つのスキルがあれば起業に役立ちます。なぜ英語かというと、グローバルで成功したいなら必須。でなきゃ、世の中を変えられないでしょ」
プログラミングはもちろん、ファイナンスも重要なスキルだ。資金に余裕がないベンチャーにとって重宝されるとか。
「英語ならTOEIC730点、もしくは英語に自信があればOKファイナンスなら財務会計と管理会計を理解していれば問題ない。簿記検定なら1級程度ですかね。プログラムはWebサービスの作成経験があればいいです」
この水準であれば学生でも一つの項目と言わず、2~3できる人もいるだろう。
「なかでもプログラミングが必要なのは、自分でサービスを作れるから。しかし、作れるレベルになくても問題はありません。重要なのは、サービスを作る上でシステムの方と同じ目線でコミュニケーションが取れる事なんです」
サービスを自作できないことは、起業する上で障害ではない。プログラミングは誰か仲間を誘って創ってもらうこともできる。
「厳密にはさっき言った3つに限らない。例えば、事業をつくるとかマーケティング、事業戦略のスキルでもいいんです。経営者に必須なのは、人を動かす力。事業の魅力をミッションやビジョンを持って語れる能力です。 プログラマーも、事業のミッションやビジョンに魅力を感じるから来てくれる。彼らを呼べない経営者はそこが弱い」
一人の人間が全てに秀でる事は出来ない。だから仲間で補い合うことが大切なのだとか。
「起業について最強の5人がいるとしたら、まず天才的な発想力がある人は当然。 もちろん天才的な技術者は欠かせない。セールスも資金調達も出来る天才的な営業力がある人と天才的な運用ができる人がいれば成長も早いです。忘れちゃいけないのがCFO(最高財務責任者)。更に、そんなメンバーを集められる人がリーダーだと強いですね」
人間関係で上手くやるには8つの魂も大事だが、リーダーが肝。有能な仲間はリーダーのミッションやビジョンについてきてくれるのだ。
「成功する起業家は具体的なミッションを持ち、数十年先の世界規模のビジョンを持っている事が多いですね。更に、事業が成長分野で、8つの魂を持っていれば絶対に成功します。単に目先のサービスで儲けたいだけだと失敗する確率が高い。僕は、『まずミッション、ビジョンをきちんと考えてください』と言っています」
榊原氏は起業前、グロービス経営大学院に通っていた。MBAは起業に直結するスキルを学べるのだろうか。
「MBAを取る必要は必ずしもないです。本で勉強すればいい。当時、MBAコースの二年目は実践的な学習だったんです。それなら実際に起業しちゃえばいいやって中退して起業したぐらいですよ」
MBAを学ぶ意義は経営において共通する知識を得て、典型的な失敗を回避する事。また、戦略ももれなく組めるようになるそうだ。
(文 坂本@thetacpa)
Post Footer automatically generated by Add Post Footer Plugin for wordpress.