前回のインタビューはこちら。
株式会社ECナビ 代表取締役社長
1972年10月12日生まれ。愛知県出身。大学卒業後コンサル会社へ就職。その後数社を経て1999年10月にアクシブドットコム(現ECナビ)創業。2005年12月、サイバーエージェント取締役に就任。2009年10月、リサーチパネルエイジアを設立、取締役就任。2007年日中韓若手経済人コンテストにて「若手経済人新人賞」を受賞。 また、2011年10月に社名を「ECナビ」から「株式会社VOYAGE GROUP(ボヤージュグループ)」に変更。
HPはこちら→http://voyagegroup.com/twitter:@usapon
また、就活生に人気のECナビのインターンは必見:http://ecnavi.co.jp./internship/
氏の共著:『新・データベースメディア戦略。オープンDBとユーザーの関係が最強のメディアを育てる』
学生結婚
結婚当時、なんと宇佐美氏はたったの19歳。若すぎる結婚に、友人や両親、親戚、周囲のほとんどに反対されたという。しかし、宇佐美氏はその普通ではない「学生結婚」の決意を突き通す。
「早稲田大学の大隈講堂の奥に保育園があって、僕が毎朝送っていく。そして夕方5時になったら迎えにいく。その繰り返しをしていました。それから僕は家計を支える役目も果たさなくちゃいけないので、バーにテキ屋、引越しバイトに事務のバイト。本当、いろんなバイトを掛け持ちしましたね。周囲にいかに反対されても、その気になればなんだってできる。自分の可能性を信じるきっかけとなりました」
夫婦ともに大学生。周囲からのサポートもあって、結果的に二人とも休学も留年もせず、無事に大学を卒業することができた。学生でありながら、結婚し、育児までもこなす大学時代だったという。
「そもそも僕自身、まさか学生結婚をするなんて思ってもみなかった。『結婚は35歳になってから』なんて思っていたのに、相当前倒しになっちゃいましたね(笑)。でも、学生結婚をしたおかげで世の中からドロップアウトした……。つまり『僕は普通の人生を歩めないんだ』と強く思ったんです。例えば、いい会社に入って出世するような、世間一般でいう『安定した生き方』は僕にはできないと思いました」
ドロップアウトを覚悟して学生結婚してから19年が経つ。しかし、その決断があったからこそ、今に繋がっている。
「案外なんとかなるものですね。おかげさまで今で仲良くやっていますし。ちなみに夫婦円満の秘訣はすぐ謝ること!!」
社長という肩書を持っているが、その素顔は一人の夫であり、一人の父親でもあるのだ。
新卒で就職、そして転職
大学卒業後、宇佐美氏は将来の起業に結びつくのではとコンサルティング会社「トーマツコンサルティング」に入社。しかし、2年後には良い給料を捨ててまでベンチャーに飛び込むことに。
「コンサルティングに興味を持ったのは、漠然と「経営」や「戦略」のイメージがあり、起業に結びつくような魅力があったからです。でも、現実は違った。ゼロからイチを創りだすことをしたかったのですが、大企業がクライアントのコンサルティング会社ではそういった経験が出来ないことが判った。」
そこで2年後、何度か一緒に会ったことがある知人が創業に関わった会社へ思い切って転職した。
「成長市場かはわからなかったけれど、とにかくベンチャー企業に憧れていまして(苦笑)。彼はネットやベンチャーに詳しくて面白い人でしたね。知人からの紹介ということもあり面接という面接もなく、即採用。社長としっかりとしゃべったのも入社当日。しかも入社日になって初めて事業の肝となるソフトの説明を受けたんです」
当時の事業内容はソフトウェアの研究開発とそれを販売すること。エンジニアも含めて3人程度のこじんまりとした会社で、宇佐美氏は営業を担当した。問屋との口座を開設したり、流通チャネルを開拓するために秋葉原の量販店へ行ったり。体力とアイディアを武器に精力的に活動したという。
起業人生のスタート
そのソフトウェアのベンチャーに在職中、宇佐美氏が注目したのはXMLという新しい技術だ。
「ただその技術より、むしろその技術を使って何が出来るのかが気になったんですよね。調べていくうちにシリコンバレーのjungleeというスタンフォード大発のベンチャーがXMLを使った検索エンジンを開発していることがわかりました」
そこで日本でも、このXMLを使った検索エンジンの開発を何とかできないかと模索したという。そんな中、ちょうどタイミングよく政府がベンチャー向けに助成金を立ち上げたことを知り、無理も承知で応募に踏み切った。見事、その申請が通り1億円もの助成金を手にする。まさにここが宇佐美氏の起業人生のスタートであった。
「最初の起業時の想いとしては、『まずは起業してみたい』という想いが半分。そしてもう半分は、『とにかくスゴイ会社を創りたい。世の中を変えるような事業をつくってみたい』という想いが半々でしたね」
だが、その最初の起業は不本意に終わる。助成金をもらって求人情報に特化した検索エンジンのプロトタイプの開発は出来たものの、うまくサービスインするまでには至らなかった。理由は自身の経営力の低さ、開発体制の問題だったという。
「ただ縁とは不思議なものですね。最初に起業した会社で仕事をした友人と仕事をしているうちに、トントン拍子で一緒に会社をもうひとつ創ることになったんです。そこで、実際に立ち上げたのが、ECナビ(当時アクシブドットコム、現在VOYAGE GROUP)です」
実は今でこそ宇佐美氏の代名詞であるECナビは、2社目の起業。1社目でうまくいかなかった経験から、創りたい企業像をより明確化した。そしてECナビは今や売上高約73億円、社員260人にもなる会社にまで成長したのだ。
「僕が創りたい会社とは、世界を変えるようなインパクトを世の中に与えるようなスゴイ会社。まさに、シリコンバレーのベンチャーのようにね。それから、毎日が高校時代の文化祭の準備期間のようにワクワク、ドキドキしている会社を創りたいと思っていました」
この想いは、今でも宇佐美氏の心の中にあり続ける。ECナビは韓国や中国といったアジア圏にも進出し、文字通り世界を変える会社になりつつある。
「VOTAGE GROUP」への社名変更の理由
そして、2011年10月、ECナビは社名を変更してVOYAGE GROUP に生まれ変わる。新たなる挑戦――ECナビをグループ会社化するとともに社名変更をするのだ。
「今はECナビの中で子会社を通じていろいろな事業もやっているんです。実際、ECナビの価格比較サイトでの売上比率は全体の30%くらい。要するに、価格比較サイト以外の事業のほうが大きくなっている。なのに、『株式会社ECナビ』っていうと、『あ、ECナビを運営している会社ですね』と価格比較サイトにだけスポットライトが当たってしまうんですよね。僕は比較サイトだけの会社に思われてしまうのが悔しい。実態と社名がズレ始めている部分があるなと思うので、社名を実態に合わせようと思ったんです」
そこで選んだのが「VOYAGE」。その意味は「航海」だ。壁には、航海の地図のようなフロアマップが貼ってある。
「もともと今のこのオフィスは、『海賊』とか『海』をコンセプトに作っているんです。社名を変えるとしたら、今まで築いてきた会社の価値観やカルチャーに合う社名にした方がいい。それからもちろん、今後やろうとしている方向性にも合ってる社名の方がいい。いくつか案は上がりましたが、やっぱり『VOYAGE』が一番自分たちのテーマとも合うし、今後の方向にも合ってると思ってその社名にしました」
しかし、最初からコンセプトがVOYAGEと決まっていたわけではない。そこにたどり着くきっかけになったのは独特の社内バー「AJITO」なのだとか。2007年7月にできたAJITO。昼はランチや軽い打ち合わせ、休憩スペースなのだが、夜はバーに変貌するという不思議な空間だ。
「AJITOを作るまでは、海賊とか海を意識してなかった。でも、今後会社をさらに大きくしようと思ったときに、まず経営の仕方や会社の動かし方を変えていくべきだと思ったんです。そこで、『会社を変えるにはどうしたらいいのか?今何が必要なのか?』と考えていたら、社員から社内にバーを作って欲しいという意見が出たんです。AJITOというからには小学生のころ作った秘密基地のような、わくわくする空間を作りたかったんですよね」
このAJITO。まさに秘密基地的な空間で、まさかココが会社の中だとは、にわかには信じたい。
「初めてオフィスに来た人がインパクトを受けてくれることは嬉しいですね。もっともっと会社の考え方や概念をオフィスのいろいろな所に広めていきたいんです。会社の経営理念に合わせて、もともと普通の会議室だった内装も変えていったところで、VOYAGEというコンセプトにたどり着きました」
(文 山中@yamachika0719)
次回は「起業してから心の軸にしてきたもの」や「宇佐美氏から学生へのメッセージ」などを掲載する予定です!乞うご期待!
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